Monthly Column VOL.67 「旅」

夏が終わりに近づきました。あなたはどんな夏を過ごされたのでしょうか。私はこのコラムをアメリカのカリフォルニアで書いています。この夏、私は2ヶ月半をカリフォルニアで過ごし、9月中旬に帰国する予定です。

この旅は、私にとって今まで生きてきた過程を振り返るとともに、これからのことをゆっくりと考え、この先をどんな風に生きていくのかという問いかけをする旅でもありました。

私は精一杯生きてきたか。
どれくらいの重荷を担いだのか、または拒否したのか。
自分自身を生きるとは、どういうことなのか。

生きること、人生とは何かという問いはずっと昔から私の中にありました。答えはオーラソーマを学びはじめてから、何かしらの印象のように漠然とハートの中にありました。でも、はっきりと解っていたわけではありません。

ASIACTの学長であるマイク・ブースはこう言います。
「真の自己はホログラムのようなもの。それは印象としてあなたの真のオーラの中にある。」と。
私はこの言葉を聞いたとき、「詳細は、はっきりとは解らないものなのかもしれない」と思いました。そして、少しがっかりしたことを覚えています。

なぜなら、真の自己を知るとは、自分自身の人生のことがすべてわかることだと思っていたからです。どんな才能があり、どんな経験をして、どういう風に生きるのかが解っていれば、どんなに楽でしょう・・・私の「自分自身を知る」ということの理解はかつて、その程度でした。今思えばとても浅はかだと思います。

この夏、私は4泊5日のバックパッキングの旅をしました。バックパッキングとは、日本で言うキャンプ登山のようなものでしょうか。バックパックに食料、テント、寝袋などを詰めて背負って歩きます。私は40リットルのバックパックにコンロと鍋、食料、テント、寝袋、着替えなどを詰め、自分自身の体重の半分以上を背中に背負って山を登りました。

場所はDESTLATION WILDERNESS という地域の、標高約7,500フィート(約2,300m)を登りきるROCKBOUND TRAIL という登山道です。このトレイルは、半分以上が岩肌を歩くのですが、予想以上に厳しい道のりでした。

何が厳しかったかというと、岩肌を歩くときには道がわからないということです。土の上を歩くときには、踏まれたあとや自然にできたトレイルをたどればいいのですが、岩の上には、足跡は残りません。

トレイルの3日目、巨大な一枚岩の上を歩くということがどんな恐怖なのかを私は体験しました。

地図上では目的地の湖はすぐのはずなのに、夕暮れ近くになって全く道がわからなくなってしまいました。日が暮れれば、先に進むことは不可能になります。夕暮れがあと1時間に迫り、私たちは途中でテントを張ることにしました。湖まで楽にたどり着けるという予測は見事にはずれ、水は底をつき、夕食をとることも難しいどころか、「水がない」という不安も感じていました。

耳を澄ますと、水の流れる音がどこからか聞こえます。私はその音を頼りにトレイルから外れた渓谷へ降りることを決心しました。

10メートルほどの崖をポンプと5本の水筒を持って、ひとりで下りる羽目になりました。「ここで足を滑らせたら、帰れないかもしれない」と、少し恐怖がよぎりましたが、ロッククライミングを楽しむつもりで降り、水を満たしてまたテントに戻ったときに、ちょうど日が暮れたのでした。

テントに着いたころ、女性の叫び声のような声が聞こえました。熊が出没するかもしれないと聞いていたので、誰かが襲われたのかと思いました。後で聞いた話では、それはコヨーテの鳴き声だったようです。いずれにしても、闇の中の叫び声は気持ちのいいものではありません。

「道がわからない恐怖」
「水がない恐怖」

国立公園の中で、バックパッキングをするにも事前に許可が要ります。誰が山の中にいるのか、レンジャーの事務所には登録がされています。

「ここは無人地帯ではない」と自分自身に言い聞かせ、不安から口数の少なくなった仲間を励まし、「大丈夫。私たちはトレイルから外れていない。」と私は心細げな表情を見せ始めた女の子に言いました。彼女にはすでに携帯電話の圏外に出たときからパニックの兆しがありました。食事の支度もテントの準備も何もできず、ただうずくまっていました。

新月の空は今までに見たことのないような満天の星で埋め尽くされていましたが、暗闇の恐怖はその美しさを堪能する心の余裕さえ奪っていきました。

テントの外の岩に座り、深呼吸をし、「朝になれば、大丈夫。先に進めなければ下山すればいい。」と思いなおして瞑想をしました。ただ風の音と匂いを感じ、標高が上がることによる空気の密度の薄さを感じ、五感が研ぎ澄まされていきました。

そして朝。太陽が昇り始め、山々を照らす光景に息を飲みました。
ただその美しさと神々しさに言葉もありませんでした。

「ここまで来れたから、もういいか。」と思ったとき、ふと廻りを眺めると、岩の上に道が見えたような気がしました。

ゆっくりと見渡し、直観が導く方向へと少し歩き出してみると、トレイルが岩肌の上にはっきりと見えました。昨夜あんなにみんなで探しても見つからなかったのに・・・。

私は仲間に様子を見てくることを伝え、30分で戻ると約束をし、荷物を持たずにトレイルを探ってみることにしました。そして、そこがトレイルだと確信し、湖の匂いと湿り気を肌で感じたこと、多分、すぐそこに私たちの目的地はあることを伝えました。

そして皆で再び出発して、たった20分。ひとつのピークを登りきって少し下るとそこに、美しい湖がありました。

「ここで、もういい。」ではなく、少しの勇気を持って進んだ者だけが見ることのできるもの。

少しの勇気と心の余裕は大切です。それをどのように、自分の中から作り出すのか。または思い出すのか。

人生と同じだと思いました。

「もうだめだ」と思ったとき、少し休んで廻りを見渡すこと。オーラソーマではグリーンでこのことが語られます。

トレイルは、背の高い岩の後ろに隠れていました。そして荒涼とした岩肌に石ころが転がっているようにしか見えなかったものは、実はトレイルのルートを案内する道標として誰かが置いてくれたことに気がつくのでした。

自然の中で、大切なことをまた学びました。

またこの次にでも、私の夏の体験をシェアしたいと思います。
あなたの夏の体験もどうぞ聞かせてください。

日本では残暑が厳しいことと思います。健やかにお過ごしください。
もうすぐあなたにもまたオクトーでお会いできますように。

Naoko
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目的地の湖
目的地の湖
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